犬が耳を頻繁にかゆがる、赤くなる、炎症を繰り返すといった症状は、多くの飼い主が経験する問題の一つです。
その理由としてよく挙げられるのが、「垂れ耳」や「耳毛の多さ」です。
例えば、トイプードルの耳の中は毛が密集しやすく、通気性が悪い構造をしています。湿気がこもることで細菌やマラセチアが増殖しやすくなり、外耳炎のリスクが高まります。

外耳炎は「耳の中の皮膚炎」です
犬の耳の中は、体表の皮膚と同じ構造をしています。つまり外耳炎とは、耳の中の皮膚に起きた炎症です。
皮膚には本来、細菌や外部刺激から守る「バリア機能」があります。このバリア機能が正常に保たれていれば、細菌が存在していても炎症は起きにくくなります。反対に、バリア機能が低下すると、わずかな刺激でも炎症が起きやすくなります。
動物病院やトリミングサロンで耳毛を抜く処置が行われることがありますが、行為そのものが皮膚にとって刺激となる場合があります。無理に抜くことで毛穴周囲に微細な損傷が生じます。また、毛をカットした場合でも、切断された毛の断面が皮膚に触れることで、摩擦や刺激の原因になることがあります。

これらの刺激は皮膚のバリア機能に影響を与え、炎症が起きやすい状態を作り出してしまうことがあります。
つまり外耳炎は、単に耳毛の量だけで決まるものではなく、耳の皮膚そのもののバリア機能の状態と深く関係しています。
外耳炎の予防や改善を考える際には、通気性の確保と同時に、皮膚のバリア機能そのものを維持することが重要になります。
バリア機能を担っているのがセラミドです
皮膚のバリア機能の中心となるのが「セラミド」です。セラミドは角質細胞の間を満たし、以下の役割を持っています。
- 水分の蒸発を防ぐ
- 外部刺激の侵入を防ぐ
セラミドが十分に存在することで、皮膚は安定した状態を維持できます。反対に、セラミドが減少すると皮膚は刺激を受けやすくなり、炎症が起きやすくなります。

セラミドはアミノ酸から体内で生成されます
セラミドは外から直接補われるのではなく、皮膚細胞が体内で合成する成分です。その出発物質となるのが、「セリン」というアミノ酸です。
セリンは脂肪酸と結合することでセラミドの骨格を形成します。つまり、セラミド生成にはアミノ酸の供給が不可欠です。
コラーゲンやエラスチンもアミノ酸からできています
皮膚や血管の構造を支えるコラーゲンとエラスチンも、アミノ酸から構成されています。これらのタンパク質は体内で分解・再合成される過程で、アミノ酸プールとして存在します。
このアミノ酸プールは、以下のような様々な用途に使用されます。
- コラーゲンの再合成
- エラスチンの再合成
- 酵素の合成
- セラミドの合成
つまり、セラミド生成はアミノ酸供給に依存しており、その供給は体内の構造維持と密接に関係しています。
<本製品(ITSMO)に含まれるコラーゲン・エラスチンが体内で吸収され、アミノ酸として利用される過程>
アミノ酸は血流によって皮膚へ運ばれます
アミノ酸は血液によって皮膚へ運ばれます。皮膚の下には毛細血管が張り巡らされており、この血流によって以下が供給されます。
- 酸素
- アミノ酸
- 脂質
これにより皮膚細胞が正常に働き、セラミドが生成されます。
血流の安定性を支えているのがエラスチンです

血管は単なる管ではなく、弾力を持つ組織です。この弾力を担い、血管壁を構成しているのがエラスチンです。
エラスチンは血管の伸縮性を維持し、血流を安定させる役割を持っています。血管の弾力が保たれることで、皮膚への栄養供給が維持されます。その結果、以下が正常に行われます。
- アミノ酸供給
- セラミド生成
- バリア機能維持
この構造が維持されることで、炎症は起きにくくなります
皮膚の状態は、以下の構造によって支えられています。
- 血管の弾性(エラスチン)
- 血流の維持
- アミノ酸供給(セリンなど)
- セラミド生成
- バリア機能の維持
- 炎症の起こりにくさ
耳の皮膚も同じ構造であるため、この影響を受けます。
外耳炎になりやすい犬種ランキング(実質TOP10)

トイプードル
- 理由:耳毛が非常に多い+皮膚体質
- 耳道に毛が多く、通気性が悪い
- 湿気や耳垢がこもりやすい
★日本でも圧倒的に多いタイプ

コッカースパニエル(特にアメリカン)
- 理由:垂れ耳+皮脂分泌量が多い
- 重く長い垂れ耳で湿気がこもる
- 外耳炎の素因が強い犬種として報告
★獣医的には「最も典型的」

ゴールデンレトリーバー
- 理由:垂れ耳+皮膚疾患体質
- 垂れ耳で湿気がこもりやすい

ラブラドールレトリーバー
- 理由:水遊び+垂れ耳
- 水分が耳に残りやすい

バセットハウンド
- 理由:極端に長い垂れ耳
- 耳が覆われ湿気がこもりやすい

フレンチブルドッグ
- 理由:皮膚体質+耳道構造

キャバリア
- 理由:垂れ耳+毛量

シャーペイ
- 理由:耳道が非常に狭い

ダックスフンド
- 理由:垂れ耳

ミニチュアシュナウザー
- 理由:耳毛+皮膚体質
共通する最大の特徴(非常に重要)
外耳炎になりやすい犬は、ほぼ例外なくこのいずれかです。
- ① 垂れ耳:通気性が悪い/湿気がこもる
- ② 耳毛が多い:汚れが排出されにくい
- ③ 皮膚体質:バリア機能が低下しやすい
外側からのケアと、内側からの構造ケア
垂れ耳のケアでは、イヤーバンドなどによる通気性の確保や、耳の清潔な環境維持といった外側からのケアに加えて、皮膚や血管の構造を支えるための栄養環境を整えることも重要になります。
外側と内側の両方の環境が整うことで、皮膚は本来の機能を維持しやすくなります。
まとめ
トイプードルのように垂れ耳の犬種に外耳炎が多い理由として、通気性が悪く蒸れやすいこと・耳毛の多さが挙げられることがあります。しかし、イヤーバンドを使用したり、耳毛を取り除いても改善しないケースがあるのは、外耳炎が皮膚のバリア機能と深く関係しているためです。
皮膚のバリア機能はセラミドによって維持され、セラミドはアミノ酸から生成されます。アミノ酸は血流によって供給され、その血流を支えているのが血管の弾性であり、その構造を担っているのがエラスチンです。
耳の健康は、皮膚・アミノ酸・血管という構造全体の状態と関係しているのです。
